Posts categorized "Scent-scape Croquis - Croquis Paysage de l'Odorat - 匂いスケッチ練習帖"

November 17, 2008

in advance of The Advent

11月30日に最も近い日曜日にはじまる、西方教会でいうところの待降節または降臨節 Advent 。今年はちょうど11月30日が日曜日なので、その日が第一主日 Advent Sunday となり、教会暦の新しい1年が始まることになります。

今年はせっかくエルサレム詣でもしたので、ちょっとこのことを気にしながら日本の街々の様子を見ていたのですが、どうやら現代日本の「マーケティング暦」 では(1)ハロウィーン関連商品の撤収と同時にか、あるいは(2)立冬の日の到来をもって、ショッピングモールのアトリウムにも玩具販売チェーン店にも ホームセンターにも、突如としてクリスマスツリーが並び、光ファイバーだのLEDだのでチカチカ明滅をはじめたり、サンタロボットがぎこちなく踊りはじめ たりして、「クリスマス商戦」の開戦を告げることになってるみたいですね。

もっとも、かぼちゃペーストを使った菓子だのパンだのが「ハロウィーン季節限定」と称して日本の小売り現場に並べられ たりするようになったのは比較的最近であり、それ以前はいわゆる「お歳暮商戦」(こちらは伝統的に立冬から。他方で事実上、11月1日からってところも増えてる模様)とほぼ同時にクリスマス商戦がスタートしていたと考え ると、日本ではもしかすると長い間、「二十四節季」という東洋の伝統がクリスマス・シーズンの到来を告げていたのかも。洋の東西をごちゃまぜに した中から商機を見出すなんて、まったく日本のお家芸だねえとシニカルに嗤うこともできれば、だってもしかしたら12月生まれじゃなかったかもしれないイエスの生 誕祭をいつのまにかキリスト教世界到来以前からの冬至祭の時期に重ね合わせちゃったヨーロッパだって似たようなもんでしょ、と開き直ることもできるし、つ まるところ草木のすべからく枯れる厳しい季節が近づく中、どうにか皆が希望を持ってこの季節を過ごせますようにと願う(北半球温帯以北の)人々の気持ちがそうさせたのなら、まあどっち がどうでも結構結構、なんて不信心な僕は思うのですが、いかがでしょう?

それでも、日が昇れば否応なくせわしない毎日がふたたびはじまるこの季節、夜明け前のしんと静まり返った町に面した窓を開けて、星ひとつ見えぬ真っ暗に曇った夜 空をひとり見上げて深呼吸すると、なんとなく敬虔な気持ちにもなろうというもの。ちなみにうちの最寄りのアメダス速報値によれば、午前5時の天気は曇り、気温 は10.9度、湿度99%、南東の風2mとのこと。いつのまにか木の匂いも土の匂いもしなくなり、残っているのはただ冷たい水と若干の冷えたミネラル臭だけ、そん なこの季節・この時間特有の冷気の匂いは、この気温・この湿度だからこそ感じることができるのでしょうね。この空気をそのまま缶詰にして、否応なくふりかかる仕事と乾燥とイライラ でガサガサにひびわれる昼間の自分のココロに、ゆっくりとかがせてあげたいものです。

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October 02, 2008

- intermezzo -

そして結局戻ってくるのはここ、日本の匂い、京都の香り。生まれ育った空気の匂いが何色だったか、それは遠いどこかの場所と較べてはじめてわかる。ロンドンのヒースローに降り立ったのは1990年の2月、夜航フェリーのデッキで嗅いだドーヴァー海峡をわたる風、パリの朝をけぶらせる晩冬の雨の匂い、フィレンツェのドゥオモに遠く低く響くグレゴリアンと香炉の気配、クラクフの夜明け前の市場を満たす冷えたミネラル臭、低い雲と水面とフィヨルドの間を這うように漂っていたノルウェイの針葉樹林の香り、ソウル鐘路4街の西側あたりから襲いかかってくる濃厚な漢方薬の匂い、マンハッタンの透明な秋空から押し寄せる高気圧と薄暗いサブウェイのプラットフォームに淀む都市の記憶、カトマンドゥの春の砂塵とどこからともなく漂ってくるバター油の燈火の燻り、エルサレムの晩夏の石畳に影を落とし行き交う人々の波と不思議な静寂、初めて訪れたイスタンブールの海と空を満たす深藍のなんという懐かしさ、そのすべてのなかで迷子のコドモのようにいちいち戸惑いながら、旅が終わりに近づくごとにこの手にいつの間にか掴んでいた見えない扉のノブを、ぼくは異国の空気の中でおそるおそる薄く開き、その隙間から漂ってくる遠く懐かしい世界の空気を、それまでの自分を当然以外の何ものでもないふりをして包んでくれていたその風景のすがたと匂いを、何度も何度も眺めなおし嗅ぎなおしてきた。

そんな18年間が長かったか短かったか、ぼくには分からない。ただ40歳を前にしてようやく僕は遠い匂いの記憶を言葉にして綴るなんておかしな真似をおぼえ、もう忘れかけていた匂いをちょっとずつ手繰り寄せることがようになったところで、気づけば匂いの記憶と一緒に、忘れなきゃいけない、なかったことにしなきゃいけない、そう必死に信じ込もうとしていた日々の記憶まで、どうしたことかどさくさ紛れに再びこの手にするようになった。何を知るでもないくせに、こんな人生なんかもう、なんてに何十回も何百回も思ってきた僕だったけれど、このヨロコビとカナシミに満ちた世界の匂いの中で、この鼻とこのコトバをもって旅を続けることができるなら、あと10年、いや20年くらいはどこでだってどうにか働いて生きていこう、もし神様が気まぐれのおまけでもいい、そのあと数年でも時間をくれたならば、その時のぼくが手にしうる総てのコトバでもって、この世界の匂いの恵みを謳いつづけよう。

そしてたぶん何度か後の人生で僕は、かつての僕が生きていたころの自分が世界のどこかに残した落書きみたいな記憶を、海辺でまるくなったガラスのかけらを見つけたコドモみたいに、面白がって手にとって陽のひかりにかざしてみるだろう。そのあとそれを大事にしまって宝物にしてくれたって、あるいは海になげすててくれたっていい。すべてが歳月の浜辺に洗われて砂塵になるその日まで、良かれ悪しかれ、残れ僕の言葉、このかぐわしき世界の、匂いの記憶。

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August 12, 2008

生傷と潮(三訂版)

 訳あって先週、自分の体から親指程度の体積の肉を、皮膚を含め切除。傷口は縫合するのかと思いきや、担当医師からは縫わずに自然な組織蘇生を待と うとの提案。手術後約一週間にして出血はほぼ止まるも、傷口にあてたガーゼはいまだに数時間たつと薄黄色い液体でじっとり重く濡れ、うっかりすると衣服や 寝具についてしまうので、日に何度かの交換を繰り返しながら今に至る。

 看護士さんの説明では、これは滲出液 exudate といって、本来なら体の中をめぐっている血液や組織液が、傷口を癒すために変化してしみ出してきたものらしい。なんてことだ。日ごろ不摂生でいじめてばか りいる自分の体が、けなげにも日夜、自己蘇生のため必死に頑張っていると思うと、ありがたいような申し訳ないような気持ちになる。

 さて。このブログは、匂いのブログ。読者各位におかれましては、すでにお察しのとおり。嗅いでみました。というと悪趣味に聞こえますが、いやでも 匂ってくるのだから致し方ない。

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June 21, 2008

暗き淵より:あるいは悔恨の闇、青緑さす暗褐色の香り - Aus tiefer Not schrei ich zu dir

いやな夢が終わる前に、また目が覚めてしまった。しかし大丈夫、この歳になるといい知恵も悪い知恵もそれなりについている。たとえば、夢は思い出してこの手でつかもうとすると途端に、煙のように逃げて消えていく、ということ。とはいえ今日の悪夢はまさか夜中3時すぎにその主が目覚めてしまうとは予想していなかったようで、なんだかよくわからない断片をあちこちこぼしながら、大慌てで記憶から逃げ出して行った。

息苦しい闇の中、寝転がったまま手を伸ばし、サッシの窓を開けてベランダからの風を入れる。5月までの春の夜明けの、あの初々しく甘やかで軽やかな香りはもうしない。あるいは梅雨入り前の6月の、りりしい青年のような若くすがすがしい緑の香りの頃も、もう過ぎてしまった。降っては止みをくりかえす雨の湿気に息を吹き返した、大木の樹皮からその根っこの端っこにくっついているバクテリアの一つひとつの、あるいは大小さまざまの水辺に息づく無数のぬめぬめしたものたちの一晩分の呼気、濃厚で粘性のある、暗褐色に青緑のさし混じった濁色の香気が、ざあーっと流れ込んでくる。

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June 13, 2008

All'Alba Vinceremo

未明のまどろみに明滅する携帯電話のLED、よせばいいのに新着メールをひらけば組織の狭間で疑心暗鬼にとらわれた人からの悲鳴のようなメール、…見るんじゃなかった。

息苦しさにサッシを開ければ、はるか遠い東雲には暁のいろ、あすこの雲と私の間に、いま遮るものの何かがあるのか、それとも、ないのか。あるいはここは無限に深く透明な湖のみな底、喉から血を噴く大声で叫んだとしてもそれは天にも地にもとどかない、だが待て、訪れるのが真なる夜明けであるならば、その光はいつしか静かにまっすぐに、我々の上へと降り注ぐ。そのとき光の源が、どれほどの距離にも嘘にも惑うことなく見出す我々の姿は、はたしていかなるものたりうるのか。

Veritas Lux Mea。斃れた敵のくろぐろしいむくろが放つ血なまぐささによらずとも、沈黙の闇からさす一条の光の中に、我らともどもの勝利を見出す、その力を。

その力を、いかでか我らに。

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June 12, 2008

ひとりサマータイム

先月から、朝4-5時台に起きて、夜10-11時台には寝る、という毎日を過ごしています。

朝風呂にゆっくり浸かり、しっかり朝食をとって、すこしでも前向きな気分で職場に向かえるように…と試行錯誤を繰り返した結果、どうやら私の場合、それらの目標を実現するには出勤の3-4時間前に起きる必要がある、という結論に達してしまった、というのが最大の理由です。

だからって4時起きはいくらなんでも…と最初のうちは思っていたのですが、ある日起きぬけに窓を開けて、愕然。ちかくの川や川沿いの並木道から、あるいは近所の美術館の庭園から、夜のうち数時間をかけてゆっくりと浄化された清冽な空気が、さあーっと部屋に入ってきたのです。遠く近くひびく水鳥やカッコウの鳴く声も、晴れているのか曇っているのかわからないような濃紺の夜明けの空も、まるで夜通し降った雪のおもてが明け方に見せるすべらかさのような、あとすこしすれば子供や散歩の犬がぐちゃぐちゃにしてしまうその前のわずかな時間に居合わせた者にだけ許される、実にはかなくも濃密な驚嘆に、満ち満ちているではないですか。

それを知ってから、もう何としても逃すわけにはいかなくなりました。夜明けの直前、今ならだいたい朝4時に、窓を開け放ってベッドの上でする、心底しあわせな伸びと深呼吸。ほんとうはそのあと二度寝できればもっともっとシアワセなんですが、それは週末だけに許される、ますます precious な悦び、ということで。

ともかくも、先月から記事の書き込みの多くが朝4-6時台になっているのは、そういう理由によるものなのであります。自分の暮らす環境を多少なりともの肯定的な説得力をもって自らに示すには-要するに「田舎暮らしも悪いことばかりじゃないのかも」と思いなすには-、バカ高いガソリン代を払って郊外のスーパーやショッピングセンターをめぐる土日のお買い物タイムより、平日早朝のかぐわしい空気を胸一杯に吸い込むときのほうが、自分には合っているのかもしれません。

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September 30, 2006

春の記憶

あかるいうすみどり色を透かしてひかる。柳の芽吹き。春の日のすがたをうつす。すべらかに尖る粒子の、かろいつらなり。ふるえながらしづか。

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February 14, 2006

U氏の場合

匂いの記憶メモ
 ・深い森の中、鬱蒼と茂る木々の傷口から音もなく滲み出る
  濃密で透明な樹脂の、静かなのに鋭く強く働きかける匂い
 ・かつて紛れもなく命を包み命の一部であった誇り高い生き物の皮革が
  その命から遠く引き剥がされ半直線状の沈黙のなかに投げ出されてもなお
  近く遠く発振しつづける、あの粗野ながら巧妙に鮮明な固有さをたたえたシグナル
  嗅ぐ者の鼻孔の遙か奥、本能に程近い場所に、甘やかな体温と質量でもって
  冷酷なほど深々と突き立てられる、誰の目にも見えぬ苦く酸い爪と牙
  昼の光には忌まわしく、夜の闇には遠く熱を持つ、醜い咬み痕

 ... 人間です。人間の匂いの話。

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February 13, 2006

タダイマ/フリージア

今日の匂いメモ (晴れ 最低-3度 最高10度)
 ・久々の放射冷却、地表近くが青く強くつめたい朝
 ・仕事部屋のドアをあけたとたん、昨日買ったフリージアの
  強い香りに驚く。東向きの陽がさして別世界のようなあたたかさ
 ・黄色いフリージアはレモンティー味のキャンディーの匂い、
  白いフリージアは胡椒の匂い、がする。とぼくはいつも
  思うのですが。あなたはどう思いますか。

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March 02, 2005

goodnight to Matilda

あいかわらず冷えたミネラル臭をふりまきながら雪が数日に一度どっと積もっては、

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March 29, 2004

花の咲く前

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[↑ 夕暮れ川沿い桜並木(まだ咲いてない)]

今日の匂いメモ (晴れ 最低6度 最高25度)
 ・昼間は久々の陽気にゆるんだ土や冬枯れした草木が
  日の光にあたためられた、軽く乾いた匂い
  町をゆくと時おり遅めの沈丁花や梅の花の匂いに
  すずらん?か何かの甘い匂いが混じる
 ・夕暮れ近くには山側や川面からひたひたと降りてくる冷気に
  すこし湿って、でもどこか軽やかな日中の残り香

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March 28, 2004

南極のにおい?

「南極はどんなにおいがしますか?」

東京の子どもが、越冬中の南極観測隊員に衛星回線で対話するという企画。その中で出されたこの質問への南極からの回答は、

「南極では、土のにおいや生き物のにおいもまったくしません」

だったそうです。(『朝日新聞』2004年3月27日付記事より)

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